Twitterとの最高の向き合い方「100日後に死ぬワニ」
Twitterで連載されたマンガ「100日後に死ぬワニ」が話題になっています。
連載終了直後に炎上騒ぎがあったのですが、この「100日後に死ぬワニ」は、アーティストがとるべきTwitterへの向き合い方のお手本だと思うのです。
この「100日後に死ぬワニ」は、2019年12月12日にスタートし、ちょうど100日後の2020年3月20日に第100回で完結しました。
作者 きくちゆうきさんのTwitter
https://twitter.com/yuukikikuchi
作品だけを見たい人はInstagramでどうぞ。
https://www.instagram.com/yuukikikuchi/
作者のきくちさんは初日にはリプライに対して応えていたものの、2日め終了後の2019年12月14日には
「初めてのバズりで困惑です
ワニのことは漫画内で察してほしいと思ってます!」
とツイートし、これ以後個別のリプライへの返信がなくなっていきます。
初めてのバズりで困惑です☝️
ワニのことは漫画内で察してほしいと思ってます!🐊 pic.twitter.com/zB1qVwx8LZ— きくちゆうき (@yuukikikuchi) December 14, 2019
開始後1週間経った2019年12月19日には
「有難いことにたくさんリプライいただけています!色々伝えたいことがあるけど、漫画内で描くべきと思っているので見ていてくれると嬉しいです。
今一つ言えるのは、ワニが好き!ということです。」
とツイートしています。
有難いことにたくさんリプライいただけています!色々伝えたいことがあるけど、漫画内で描くべきと思っているので見ていてくれると嬉しいです。
今一つ言えるのは、ワニが好き!ということです。— きくちゆうき (@yuukikikuchi) December 19, 2019
個人では整理しきれないくらいの多くの反響が寄せられていたのでしょう。
僕がこの作品を見始めたのはこの頃です。だれかがリツイートしたのをきっかけに見始めたんだと思います。
本人の困惑とは別に、この評判はどんどん広がっていきます。
1月だったと思うけれど、それまでなかった「お仕事や問い合わせなどはこちら」という表記がTwitterのプロフィール欄に追加されました。
2月になるとLINEスタンプができ、この告知ツイートが固定されます。
また、この頃になると作者のきくちさんが地上波のテレビに出始めます。
「スッキリ」など、いくつかのメジャー番組にも出演したのですが、著作権がきちんと処理されているのはこのフジテレビの番組。
挙句の果てには「はじめしゃちょー」の番組にも電話で出ちゃいますw
こうして、どんどん大騒ぎになっていったのですね。
きくちさんのTwitterのフォロワー数は連載終了直前で150万! この原稿を書きながら2020年3月23日の夕方確認したら220万にもなっていました。 220万、って、Twitterの公式アカウントとほぼ同じw
https://twitter.com/TwitterJP
作者のきくちさんのフォロワーは「100日後に死ぬワニ」開始のときには1万くらいだったそうです。1万という数でもイラストレーターとしてはすごいとは思いますが、これがたった100日で220万人に。ものすごいことです。
私が「100日後に死ぬワニ」が素晴らしかったと思うポイントをまとめておきます。それは
- クリエイティブがいい
- 毎日毎日投稿
の2点です。
1. クリエイティブがいい
- 「100日後に死ぬワニ」は4コマ
4コマという、ひと目で目に入るTwitterにすごく合ったフォーマットであること。
- どこにでもありそうな絵柄
どこにでもありそうな、人に警戒感をあたえない、絵柄。
- とにかく、平坦なストーリー
毎日4コマですが、新聞連載のマンガのようにその日の世の中のできごとなんか全く反映されていません。入院している友だちのお見舞いに行ったり、「わははは」とテレビを見たり、ワニ子さんのことがちょっと気になったり、電車で席を譲ったり、という日常が延々と続くだけ。
音楽でいうと、一つのリフでメロディを変えながら、ずーっとずーっと同じ景色を映し出して行く作業。つらいよね。途中でコード・チェンジしたくなるし、抑揚も付けたくなっちゃう。でも、ずーっとずーっと同じ日常を描ききって100日目だけは13コマ、と、形式をガラッと変えてドカンと終了。
見事です。
これは、できそうでできないこと、です。
2. 毎日毎日投稿
アーティストやマネジメントと話していると「毎日Twitterに投稿なんかするとうざいですよね?」と、とてもよく言われます。
そんなことは、ない!
ユーザーはすごい数のツイートを見ていますから、昨日あなたがどんなことを書いていたかなんて覚えていない。というか、覚えていてくれない。
「100日後に死ぬワニ」はこれとは逆に毎日毎日投稿されるのだ、とユーザーがわかっているし、楽しみにしてもらえるクリエイティブのちからもあるから、タイムラインで発見できなければ検索してでも発見してくれます。
その日のエピソードが印象に残れば、今度はRTしたり、Facebookに投稿したりして、自分の友だちにも知らせてくれます。
「100日」というのも丁度いいサイズだったのかもしれません。アーティストのツイートでは、新たなリリースがあるとカウントダウンしたりして、集中ツイートするけれど、しつこくならない短い時間でやめてしまうようなことが多いですよね。
それと比べると、100日というのは長丁場ですが、実はいい長さなのかもしれません。
感動の最終回を迎えたとたんにやれ「いきものがかり」のコラボレーション・ソングだ、少年サンデーコミックで単行本化だ、グッズも山ほど出るぞ、ということで、ガックリしている人もいるようだけれど、コロナウイルスで人々が後ろ向きになっている今、売れるといいですね。
この原稿を書いている2020年3月24日には、原宿にもうショップが出来上がっていました。